現場1年目用データマーケティング・マニュアルvol.3 データ分析の基本は「素材・ピボット・スニーカー」

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「データ分析の沼」でお悩みの方へ

 

Vol3ではデータ分析の基本は「素材・ピボット・スニーカー」というお話をします。vol2を先にお読みいただくと、より分かりやすいかと思います。前回同様、ゴールからの逆算の方が理解しやすいため、論点設定の前に「仮説を立て、検証する」について扱います。

 

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データ分析とは料理。素材が9割。

データ分析の仕事には、”沼”があります。沼とは、データを数時間いじり倒すも、面白い発見を得られない状態のこと。料理で例えるなら、キャベツをひたすら千切りやみじん切りにしているだけの状態。
この沼にハマる一因は、「分析手法を駆使すれば、どんなデータからでも価値を出せる」という思い込みだと感じます。データ分析は料理と同じく、肝心なのは素材(データ)の質。それにも関わらず、この思い込みがあると、データをこねくりまわす “沼”にズブズブはまっていきます。

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つまり、データ分析のカギは、分析手法の多彩さの前に、データの目利き力。質の良いデータならば、excelでピボットするだけでもステキな発見を得られます。目指すは、一流の寿司職人。最高の素材を仕入れ、サッと捌き、キュッとまとめる。こねくりまわさない。

質の高いデータを仕入れる「素潜り術」

そもそも質の良いデータとは何か? 良質なデータとは「意思決定に白黒つけられる情報」だと思っています。つまり、質の良し悪しは、どんな選択に迫られているか次第で変わる。たとえば、「顧客Aにオススメする書籍は?」に白黒つけるには、「顧客Aの購買履歴」が良質データになります。しかし、「テレビCMとデジタル広告の予算配分をどうするか?」では「顧客Aの購買履歴」は役立たずデータになります。

次に、良質なデータをどう仕入れるか? 大きく2つあります。
①サービスから生まれるユーザーデータを収集する「地引網」的方法
②仮説を先に持ち、それを検証できるデータを掴み取りにいく「素潜り」的方法

 

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具体的な素潜り方法をご説明します。ダイバーが海に入る前にレシピと必要な魚を思い浮かべるように、データを触る前に、ワードでトークスクリプトを書きます。Vol2で説明したトークスクリプトをいきなり書きます。
 「分析結果も見ずに、提案のスクリプトなんか書ける訳がない」という反論が聞こえてきますが、お待ちください。ノーベル賞受賞者のランドシュタイナー氏は「実験する前に論文を書く」が習慣だったように、データマーケターもスクリプトを書けるレベルまで「論点(=問い)と仮説(=イマ出せる答え)を煮詰める」ことが大事なのです。その思考を省いて、データ集計作業に飛びつくから“沼”にはまるのです。(と、5年目までの私に声を大にして言いたい。) 

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都合の良いデータを集めるべからず

トークスクリプトを書いた後に、注意していただきたいことがあります。「打ち手ありきで、都合の良いデータを集める」は御法度です。たとえば、もし医者が「外科手術をしたい」一心で診断をしたら、不要な手術が生まれるリスクが大きいですよね? 不要な打ち手を生まないために、自説に都合の良いデータを集めてはダメなのです。
 しかし、人間とは「自説に都合のよい証拠を集めたい」生き物。行動経済学で言う「確証バイアス」を持っています。では、どうしたら回避できるのか?2つ方法をご紹介します。


 ①「仮説が当たりならA案、外れならB案」とスクリプトにメモしておく。
  こうすれば、データ分析の結果に基づいて、打ち手を選べます。


 ②「反論に反論できるデータ」を集める。
  たとえば、テレビCMを提案する際の根拠に「ターゲットの5割が見ているから」と言うと、「テレビよりSNSの方を見ているのでは?」と反論されます。その反論に反論するには「ターゲットのメディア接触を調べると、テレビが5割、SNSが4割でテレビが依然トップです」と返します。この「反論の反論」に用いたデータを、第一声の根拠におきたいのです。そのため、一度スクリプトを書いた後に、提案相手の反応を想像してみると、必要なデータがクッキリしてきます。このシミュレーション思考のお手本は、『HUNTER×HUNTER』30巻の十二支ん会議でのジンです。

仮説はデスクじゃない、現場に落ちているんだ。

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スクリプトを書いている時の悩みに「仮説が思いつかない」があります。その時、デスクで一人ウンウン唸っていても、仮説は降ってきません。なぜなら、仮説のタネは現場に落ちているからです。現場とは「実店舗・ECサイト・SNSアカウント」はもちろん、「顧客やスタッフの生声」も含まれます。

お手本は『名探偵コナン』です。コナン君は推理を進める際、殺人現場を歩き回り、関係者に話を聞きまくります。この「名探偵の現場ウォーク」が、仮説を見つける基本所作だと思っています。

そこで、データマーケターには「スニーカー」の着用をオススメします。デスク用サンダルを履くと、現場ウォークしづらいからです。スニーカーを履き、いつでも現場へ飛び出せるようにしましょう。

違和感が、仮説の母。

しかし、現場をボーッと歩くと、ただの散歩になります。では、どうするか?現場ウォーク中のコツは、「妙だな?」という”違和感”にアンテナを立てることです。

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違和感をナゾに言い換え、そのナゾトキをする。そのナゾトキの回答=仮説です。

 

仮説の検証方法は自由に考える

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仮説が見えてきたら、その検証方法を考えます。まず「どのデータの海に飛び込むか?」を決めるために、次の2つを考えます。

①どんな図表だと、聞き手がわかりやすいか?(グラフをラフスケッチする)
②その図表をつくるのに必要なデータは?

こう考えて、以下のデータソースの中から、ベストと思うものに飛び込みます。

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この検証フェーズは、一見ロジカルだけの世界に見えますが、実はアイデアの余地が広がっています。あるスタートアップでの好事例があります。

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この問いを、オーソドックスに解くとフェルミ推定やアンケート調査を使います。
 しかし、ある起業家は別解を閃きました。それは「全自動折り畳み機のハコだけ作ってコインランドリーに設置し、ハコの中で人が折り畳み、実際の使われ方を調べた」です。このデータが取れれば、excelピボットで集計するだけでも、関係者を唸らす分析結果を作れます。
 このように、たとえ統計解析が苦手でも、アイデアの力で優れた分析結果を作れます。つまり、私のような「数字や統計にヨダレがでない」タイプでも、仮説力と発想力で十分戦っていけるのです。

KPIは「分析ツールの使用時間」

 最後に、データ分析の上達を測るKPIとして「分析ツール(excel・Python・Google Analytics等)の使用時間」をオススメします。短いほどグッドです。仮説ドリブンで動ければ、分析ツールの使用時間はグッと短くなります。反対に、沼にハマると8時間/日みたいな事態が起きます。

 まとめると、スニーカーで現場ウォークし、見つけた仮説を柔軟に検証する。そんなアウトプット価値も高く、目にも優しい働き方をぜひ試してみてください。ただし、1年目では仮説が外れることも多いので、その時は思いきり“沼”にハマってOKです。沼にハマった経験が、仮説ドリブンの必要性への気づきと、分析ツールの習得に繋がるからです。
 以上、「仮説を立て、検証する」コツでした。次回は、「論点を設定する」に関するコツをお伝えします。ご期待ください。

 

 

“生活者データ・ドリブン”マーケティング通信 | 博報堂DYグループ より転載